2016年7月2日土曜日
日本で一番人口の少ない村、青ヶ島村に行ったお話 3日目
2016年6月20日、午前7時。細かい雨が降っているが、船は順調に八丈島へ向けて航行している。
八丈島で乗り継ぐ青ヶ島行きの船、あおがしま丸の就航状況は運航日の午前7時に決定される。
電話をかけると自動音声で案内してくれるので、早速電話した。
さすがに緊張した。
欠航となれば八丈島で泊まるか、青ヶ島を諦めて帰らなければならない。
「本日のあおがしま丸は・・・予定通り運航となります」
とりあえず運航するようで安心した。
まずは第1の難関は突破したことになる。
レストランで朝食をいただく。シンプルなきつねそば。
船は時刻通り、8時50分に八丈島の底土港に到着した。
約11時間の長旅、お疲れ様です。
港にはこれから乗るあおがしま丸が停泊していた。
小さな船だがこれでも新しい船で、2014年1月に就航した。
それまで使われていた環住丸が120トン、現在のあおがしま丸が499トンなのでかなり大きくなったのだ。
底土港の窓口で乗船券を買う。
窓口で、宿は確保していますか?と聞かれたのが何気に面白かった。
確かに、宿を確保せずに青ヶ島へ行くのは大変だ。一応キャンプ場もあるみたいだが、そんな装備は持っていない。
まだ就航して2年ちょっとと言うことで、船内はとても綺麗。
観光で訪れる人は少ないのに、船内には青ヶ島の観光名所の写真が貼られているし、パンフレットや記念のスタンプなども置いてあった。トイレも綺麗だ。
客室内はすでにお客さんで賑わっていたので撮影していないが、カーペット敷きの雑魚寝タイプである。
船は予定通り9時30分に底土港を出航。
青ヶ島へ向けて走り出した。
それにしても揺れる。
これでもまだ穏やかな方だろうが、瀬戸内で育った自分からするとかなりの大波だ。
船酔いはしないと思うけど、ほかの乗客に倣ってさっさと寝ることにした。
船は時間通りに青ヶ島は三宝港に到着。
インターネットで事前に知ってたとは言え、目の前の巨大な法面の迫力に圧倒される。
しかし、それで驚いていてはいけない。
これが港なのだ。激しく波が打ち付ける港。わずかなスペースに必要な設備を建てたので要塞のようになっている。
ちなみに、写真の左右に鉄塔が建っているが、これは港に着いた漁船を陸に吊り上げるための索道である。
波の荒い青ヶ島では港に船を係留しておけないので、索道で船を写真の左側の陸地へと運んで保管しておくのだ。
ぼーっとしていたら波を被ることになるので、さっさと港から離れた方がいい。
船に積んだコンテナの積みおろし作業もある。
船に積まれたコンテナをクレーンで下ろしている。
大きく揺れる船からコンテナを吊り上げるのは大変そうだ・・・。
青ヶ島でお世話になる宿の女将さんが、港から歩くとすごい時間がかかるから知り合いに迎えに行かせると言うので、お言葉に甘えて車に乗せていただきました。
車に生活物資などを積み込むため、ぼくは車で待機。
島の男たちがコンテナから次々に物資を車に積み込んでいた。
ぼくはこの光景を見ただけでも少し興奮した。島の暮らしをほんの少しだが見ることができたわけだ。
入り切らなくて分かりにくい写真になってしまったが、漁船はこのように陸に保管している。
車で急な坂を上ったり下ったりしつつ、15分ほどで宿に着いた。
車を運転してくれたおじさんにお礼を言ったがスルーされた。
ここは観光地ではない。おじさんもそれほど外部との人間の相手になれていない感じだった。寡黙な島の男であって悪意はない。
お世話になったのはビジネス宿中里さんで、見ての通り綺麗な建物だ。
室内もシンプルな和室、二人入ればいっぱいになる浴室、そして、広い食堂とシンプルな作りになっている。
若い男性従業員に案内されたが、こちらの方もまた世間話などは一切せず、宿の中の案内を淡々と済ませ、調理場へと戻っていった。
港では要塞のような風景に圧倒されていたが、言葉数の少ない人たちに会っていよいよ島に来たんだなと実感が湧いてきた。たまらんな。
荷物を置いたら早速散策することに。
宿のすぐ近くに、島で唯一の郵便局があった。
ATMもあるし、窓口も8時から16時までと、意外と営業時間が長い。
島の道路は基本的に平坦なところはない。
どこへ行っても坂になっている。
とりあえずヘリポートへ向かってみることに。
集落の北側にあるお墓を抜ければヘリポートがある・・・。お墓・・・。
目の前が開け、草原のようなところにヘリポートがあった。
このとき、島に来た高揚感から全く気づきはしなかったが、写真を改めて見てみると不穏な空気が漂っている。心霊とかそういうものではなく、この霧である。これが後々、ぼくを困らせることになるとは、このときは1ミリも思ってなかった。
ヘリポートのターミナル的な建物。とても小さい。ここで搭乗手続きや荷物の検査などが行われる。
ヘリポートからひとつ東側の道路の先に、神子の浦展望広場というのがあるので行ってみた。
それにしてもこの険しい地形。目の前に見えるはずの集落へ行くのも、こうやって急な坂を下り、そしてまた上ることになる。
雨で路面が濡れているし、坂も急なので滑らないようにゆっくり歩く。大ケガをしたらどうなるんだろう。一応村には診療所があることにはあるが・・・。とにかく、骨折でもしたら村を巻き込むことになりそうだなと思いながら坂を下った。
集落を北へ抜けると木々が低くなり、草原のようなところに出た。気持ちがいい。しかし、草原のように見えるが、よく見ると低木が生い茂っているようだ。
神子の浦展望広場と言っても、道路の脇にほんの少しの空き地があるだけだった。
しかしここから見れる風景のすばらしさは感動的だった・・・。
高所恐怖症の人はあまり覗かない方がいい。神子の浦展望広場の標高は約250メートルぐらいらしいが、見ての通り崖になっている。
海からの風が容赦なく吹き付け、さすがに自分も少し恐怖を覚えた。
海岸に打ち付ける波の音もはっきりと聞こえてくる。
なんとも心細い。
自然からしてみたら人間なんて塵みたいなものなんだろうなぁ。
青ヶ島は火山である。
海面から顔を出してるから島として認識されているが、海水を抜いてみれば海面から下も断崖絶壁である。
もちろん、見ての通りちゃんと海水があるので断崖絶壁だと言うことは見た目には分からない。
しかし、自分がこの海底から盛り上がってほんの少し海面から顔を出している青ヶ島という小さな島にいることを意識すると、なんとも不安で心細くなる。
曇りなのに海は青くて綺麗だ。
できることなら梅雨ではなくてもっと季候のいい時期に来たかった。
晴れていればどんな青さだっただろう。ここから見る夕日はどれだけ綺麗だっただろう。
ぼくはまた青ヶ島に来ることを決意した。
やめておけばいいのに、もう一度崖を覗いてひとりでびびる。
再び集落に戻り、学校の方へ来てみた。
離島にはよくある教育用の信号機が立っていた。
長崎の池島に行ったときも、教育用の信号機を見かけた。
青ヶ島のこの信号機も池島の信号機も常時青が点灯している押しボタンタイプだ。
立派な建物の青ヶ島小中学校。
生徒数は小中合わせてわずか13人だが、この離島で13人もの生徒がいるのは多い方だろう。
島の電力を担う発電所。
島で唯一のガソリンスタンド。
道路を挟んで左側に商店もある。
そこで食品や雑貨が手に入る。
当然だがコンビニなんてあるはずもない。
再び急な坂を歩いて宿に戻る。
青ヶ島のテレビでは、港やヘリポートのライブ放送が見れる。
テロップで船の就航状況やイベントの案内なども流れてくる。
青ヶ島には飲食店がないので、3食とも宿で作ってくれる。ちなみに居酒屋が2軒ある。
夕飯は青ヶ島や八丈島の郷土料理である島寿司をはじめ、地元でとれた食材を使った料理が並ぶ。
べっこう飴のように光る島寿司はネタを醤油につけ込んだお寿司で、わさびではなくカラシが使われているのが特徴。
醤油につけ込んでいるので、醤油は付けずにそのまま食べられる。
味が染みこんでいて、魚の味と歯ごたえ、そして意外にもカラシの辛さが合う。
不味いわけがないよなぁ。
ちなみに食堂を見渡してみると、どうも観光できている人は自分一人しかいないようだった。
ぶれていて申し訳ないが、この日は満月だった。
月の光がとても明るかった。
こうして、島での1日目が終わったのでした。
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